ご馳走旅日記
宮崎県・高原町。霧島山のふもとに広がる豊かな自然の中で、三代にわたり100年近く原木椎茸を育て続けているのが「田中椎茸」です。
日本で流通している椎茸のほとんどは「菌床椎茸」と呼ばれるもの。おがくずなどを固めたブロックに菌を植え付け、室内で温度や湿度をコントロールしながら育てられます。安定した品質と生産量が特徴ですが、それに対して原木椎茸は、森の中で光や水、寒暖差といった自然環境そのものを相手に成長する特別な存在です。先の読めない厳しさもありますが、その分、自然と向き合いながら手間を惜しまずに育てられた椎茸には、格別の香りと力強い旨みが宿ります。
田中椎茸では、霧島山系のミネラル豊富な水「霧島烈火水」を使い、収穫後は昔ながらの薪室で仕上げています。そして何より大切なのが森に差し込む木漏れ日。光がなければ椎茸は真っ黒になり、きれいに割れ目の入った肉厚な姿には育ちません。春先のわずかな温度や光量の違いが、出来栄えを大きく左右するのです。
収穫は11月末ごろから始まり、低温乾燥、冷凍、生とさまざまな形で届けられます。シェフの「こんな椎茸が欲しい」という声に合わせて収穫・納品を調整するのも田中椎茸ならでは。生産者は「椎茸はきのこの一部ではなく、一つの食材として誇りを持ってほしい。料理名も“きのこ料理”ではなく“椎茸料理”と呼んでほしい」と語ります。
実際に味わってみると、乾燥でも冷凍でも驚くほど肉厚で、噛みしめるたびに力強いうまみと弾力が広がります。一度この味を知ってしまえば、ほかの椎茸では物足りなく感じるほど。シンプルにオイルや塩だけで調理しても、素材そのものの存在感が際立ちます。
自然とともに歩み、椎茸の可能性を信じ続ける田中椎茸。宮崎の豊かな山里から届けられる一枚は、まさに大地の恵みそのものです。