ご馳走旅日記
ー宮崎・延岡「鏡山牧場」
「家族に食べさせたい牛を育てたい」。
宮崎県北部、延岡市の山あいにひっそりと広がる鏡山牧場。
電気も通らず、周囲に人の気配もないこの自然豊かな場所で、広島から移住してきたオーナー・鶴田さんは、牛たちとまっすぐに向き合い続けています。
鏡山牧場では、育てる牛の数をあえてしぼっています。数が少ないからこそ、一頭ずつにしっかり目が届く。顔が見える農家さんから牛を迎え入れ、自然に近い環境の中で、のびのびと育てています。
飼料は牧草が中心で、ほんの少しだけトウモロコシを加える程度。アニマルウェルフェア(動物福祉)に配慮した、やさしい育て方です。
また、放牧の仕方にも工夫があります。
「牛は放しておけばいいというわけではありません。」とおっしゃる鶴田さん。
一年中、外で過ごしていると、牛が草を踏みつけてしまい、うまく食べられずに痩せてしまうこともあるのだそうです。
実際、以前に2〜3年と長く放牧した際には、肉の味がオージービーフのように変わってしまったことがあったといいます。
その経験から、現在は3〜6ヶ月の“ちょうどいい”期間だけ放牧し、自然と向き合いながら、おいしさを守る方法を選ばれています。そんな姿勢に、私達自身とても共感しました。
さらに、お肉の熟成方法にも、独自のこだわりがありました。
一般的な「ドライエイジング」とは異なり、特別な菌を使わず、表面をゆっくりと乾かす方法です。干物の「一夜干し」に少し似ているかもしれません。
この方法だと、乾いた表面までまるごとおいしく食べられるうえに、いったん冷凍したあとでさらに旨味が増すこともあるのだとか。ちょっと意外でしたが、実際に食べてみて納得しました。
赤身の旨味がしっかりと感じられ、それでいて柔らかい。脂は口に残らず、あと味もすっきり。塩だけでじゅうぶんおいしく、余計なことはしない方がいい、と思えるお肉でした。
「家族に食べさせたい牛を育てたい」。そのまっすぐな想いが、私達の心にも強く残っています。
だからこそ、私達のレストランでも、自信を持ってこの牛をお届けしたいと思っています。